قصة الكتاب :
文藝春秋(文春文庫)/2012年/232ページ/本体533円/ISBN 978-4-16- 783811-9 湯本 香樹実 1959年東京都生まれ。デビュー作『夏の庭―The Friends』で日本児童 文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同書は映画化・舞台化され るとともに世界10カ国以上で翻訳され、米・ミルドレッド・バチェルダ ー賞、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞などを受賞した。
ある日、「私」が台所でしらたまを作っていると、配膳台の奥の薄暗がりに夫の優 介がふいに現れた。優介は3年前に姿を消して行方知れずだったが、好物のしらたま を食べるために戻ってきたのだ。ただし優介は、自分は水底で蟹に食われたと言う。 そしてまたどこかへ行こうとしている。 <さあいそいで。夜が明けきってしまう> 二人は荷造りをして旅に出る。それはすでに死者となったが死にきれずにいる優介 が妻にある一言を伝えるために歩いた道のりをさかのぼる旅だった。新聞配達店、餃 子屋……二人は夫を知る人を訪ね歩き、山のタバコ畑では農作業も手伝った。彼らは 生者とも死者ともつかない。だが、あてどもなくさまよう夫婦をごく自然に受け入れ ていた。彼岸と此し 岸がんを行きつ戻りつする中で、「私」は夫の3年間の不在を埋めていく。 <ちゃんとあやまりたかった>。優介は沖のほうを見ながら妻に言った。海辺でた たずむ二人の前にやがて天につながるヤコブの梯は しご子が現れる。優介の魂に別れを告げ た「私」は、二人分の荷物を持って再び歩き出す。現代の「冥界下り」を描く、美し く静かな物語だ。(SH)
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