قصة الكتاب :
新潮社(新潮文庫)/2010年/184ページ/本体362円/ISBN 978-4-10-129671-5 岡田 利規 1973年神奈川県生まれ。劇作家、演出家、小説家。1997年に劇団カンパ ニー「チェルフィッチュ」を旗揚げ。2005年『三月の5日間』で岸田國 士戯曲賞を受賞。同作を小説化し、オリジナル小説「わたしの場所の複 数」とともに収録したデビュー小説集『わたしたちに許された特別な時 間の終わり』で2008年に大江健三郎賞を受賞。
2作を収録する本著の前半を成す短編は「三月の5日間」。2003年春、米国ブッシュ 大統領がイラクへ大規模な軍事行動を宣告し、そのタイムアウトが迫る中、「特別な 時間」をともに過ごすことにした、一組の若い男女の話だ。 六本木のライブハウスでふと出会った二人は、ブッシュを批判する米国人たちのパ フォーマンスを聞いているうち、どちらからともなく会場を抜け出し、渋谷のラブホ テルへと向かう。その一室をニュースから遮断されたシェルターに見立てたかのよう に、二人は5日間、籠こ もり続ける。 フリーターの男は言う。<ウチら戦争のあいだずっとやりまくってたってことにな るわけ? それやばくないか?(中略)ラブ&ピースじゃなくてセックス&ウォー? みたいなね。なんか俺言ってることよく分かんないね。でも、もしそういうことを思 えたらさ、なんというか、歴史とリンクしてるじゃんウチら、みたいなさ>。彼女の ほうもあとで振り返る。<私たちは窓も時計もない、テレビも見ずに済む、子供の夢 のような部屋にいたのだ>と。 それだけの話ではある。だが、二人はなぜ、このとき、「特別な時間」をこのよう に過ごしたのだろう。彼らの不安な気持ちを、世界中の若者がどこかで共有している のではないか。 新しい文学はもはや不可能かもしれない……。ともすれば絶望的になりかける2000 年代の日本の現代小説に、新たな光を指し示した岡田利規。その才能は一足早く演劇 界で、欧米まで知られ始めているようだ。(OM)
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