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قصة الكتاب :
朝日新聞出版/2012年/260ページ/本体1500円/ISBN 978-4-02-250998-7 西 加奈子 1977年イラン・テヘラン生まれ。エジプト・カイロ、大阪育ち。2004年 『あおい』でデビュー。2005年『さくら』が26万部を超えるベストセラ ーに。2007年『通天閣』で織田作之助賞受賞。2013年『ふくわらい』で 河合隼雄物語賞受賞。他に『舞台』『サラバ!』など。
主人公の25歳の女性の名は、鳴なる木き ど戸 定さだという。マルキ・ド・サドをもじって命名し た父、栄蔵は世界中を探検し、禁き んき忌を犯すというグロテスクの極みのような体験を求 めた作家であり、定も父との旅に同行しながら育った。そのせいか、出版社で書籍編 集者になって、プロレスラーや盲目の作家を担当するようになってからも、<自分と 人との間に、透明のぶあついガラス>があるようで、人付き合いは極めてぎこちない。 仕事はできるが周囲からは変人と見なされ、恋愛体験もまだない。 「ふくわらい」という、目隠しをして、目、鼻、口、眉毛など、顔のパーツを並べ て顔を再構成する古来の遊びが、定は子供の頃からたまらなく好きだった。生身の人 間を見るときも、美びしゅう醜ではなく、バランスが悪く、面白い人間のほうが好き。編集者 になったのも、文字というパーツの無限の組み合わせで文章が、そして作品が出来上 がる「言葉」というものが好きなのだった。 この長編小説は、そんな定のたぐいまれなるイノセンス――それは一つ間違えば、 怪物のようにグロテスクな側面もはらんでいるのだが――という個性を損なうことな く、他人と喜びを共有し、愛を感受するに至る、いささか遅咲きの成長物語である。 無機的な感情に閉じこもっていた定は、どのようにして有機的な「恋」という感情を 開くに至るのか。 第一回河合隼雄物語賞にふさわしい、ユニークで伸びやかな快作だ。(OM)
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