قصة الكتاب :
講談社/2013年/185ページ/本体1400円/ISBN 978-4-06-217799-3 川上 未映子 1976年大阪府生まれ。2007年デビュー小説『わたくし率 イン 歯ー、ま たは世界』が芥川賞候補に。2008年『乳と卵』で芥川賞、2009年詩集『先 端で、さすわ さされるわ そらええわ』で中原中也賞、2010年『ヘヴン』 で芸術選奨文部科学大臣新人賞および紫式部文学賞を受賞。
すでに世界の共通語になりつつあるらしい、日本発の「かわいい」。この形容詞の たわいなく明るいばかりではない陰りも含むニュアンスを正確に知りたいならば、川 上未映子の小説やエッセイを読むといい。 フリーターや新婚さん、夫が破産した熟年の妻……さまざまな環境の中で、何かの 「愛」を求めて暮らす女性たちが登場する、7つの短編集。表題作「愛の夢とか」には、 時間を持てあます若い妻の、こんなつぶやきが出てくる。 <ところでマカロンを買うときのあの気分っていったい何だろうといつも思う。自 分が掛け値なしのバカになったみたいな気持ちになっていっそ清々しいような気持ち になるあの感じ> 彼女たちは必ずしも恋人を、夫を、家族をもっとも愛しているわけではない。誰に でもわかるやり方で、懸命に生きるための努力を続けるわけでもない。彼女たちが好 きなのはまず自分だし、この瞬間を満たしてくれるさまざまな「かわいい」モノ。大 事なのは、自分自身が愛する対象としての「かわいい」であり、男性目線からお金儲 けを目も くろ論んで製作される偽造品の「カワイイ」とはまるで違う。いくら気まぐれでキッ チュに見えても、それぞれ生身の女性の感情から生み出された本物であり、切実な叫 びを秘めているのだ。 川上未映子は申し分ない散文の才能を持っているけれど、本質は詩人だろう。この 時代に生きている女性の感性と、あらゆる外部との接触によって飛び散る、一行一行 の真摯な火花は可憐で、余韻ある弧を描く。(OM)
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