قصة الكتاب :
新潮社(新潮文庫)/2012年/174ページ/本体400円/ISBN 978-4-10- 138761-1 楊 逸 1964年中国ハルビン生まれ。1987年来日。1995年お茶の水女子大学文教 育学部卒業。2007年『ワンちゃん』で文學界新人賞受賞。2008年『時が 滲む朝』で日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞する。 この他の作品に『金魚生活』『おいしい中国―「酸甜苦辣」の大陸』など。
現在、日本で学ぶ海外からの留学生は約14万人にのぼる。しかし彼らの日常を描き 出した小説は、まだ数少ない。本書は自らも留学生として来日したのち、小説家となっ て成功した作者が、中国からの女子留学生・ココちゃんの発見と喜びに満ちた日々を ユーモア豊かに描いた佳作である。 彼女は日本語を懸命に学び、大学に通うかたわら、高級すきやき店でアルバイトを する。店員のユニフォームは和服だが、帯でぐるぐる巻きにされた自分の姿がココちゃ んには「束ねられた長ネギ」みたいに思えてしまう。最初は、すきやきをどのように お客にサーヴすればいいのかもわからなかった彼女だが、先輩店員たちに可愛がられ、 徐々に店に溶け込み、常連客にも親しまれるようになっていく。 一方、大学では韓国からの男子留学生がしきりに彼女に話しかけてきて、日本語に 慣れない者同士、ブロークンな日本語で会話しながら、一種の連帯感で結ばれるよう になる。だが、韓国人学生が恋愛関係を求めるのに対し、ココは次第に、すきやき店 店長への思慕を燃やしていくのだった。 日中韓、それぞれの常識や発想の違いが生み出すギャップを面白く浮き彫りにしな がら、作者はいわば比較文化的、あるいは多文化主義的な物語を軽やかに紡ぎ出すこ とに成功している。(NK)
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