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قصة الكتاب :
中央公論新社/2015年/400ページ/本体2200円/ISBN 978-4-12-004763-3 佐伯 一麦 1959年宮城県生まれ。1984年「木を接ぐ」で海燕新人文学賞、1990年『シ ョート・サーキット』で野間文芸新人賞、1991年『ア・ルース・ボーイ』 で三島由紀夫賞、2004年『鉄塔家族』 で大佛次郎賞、2007年『ノルゲ Norge』で野間文芸賞、2014年『還れぬ家』で毎日芸術賞、『渡良瀬』 で伊藤整文学賞を受賞。
「近頃、空を見あげることが多くなった」。宮城県仙台市に暮らす作者は、東日本大 震災後から丸3年が経った頃から、この私小説を書き始めている。同じ空の下で命を 共にしている鳥獣虫魚、植物を、集合住宅のベランダから思いやりながら、中年の夫 婦「早瀬」と「柚ゆ ずこ子」は、穏やかな日常を少しずつ取り戻しつつある感慨に、日々、 何度も浸らずにはいられない。ある時は青あ おばずく葉木菟の鳴き声を寝床で聞きながら。柚子 は台所でらっきょうを漬け、探鳥会に参加している時も。昨年と同じ営みを今年も繰 り返すことができるひとときを分かち合うことで、二人は前を向こうとしているかの ようだ。 津波で家を流されたり、原発事故で避難を余儀なくされた直接の被災者ではない。 だが、この夫婦は、震災の話題を親しい隣人との会話をいまだに避け、未来への希望 を気軽に語らうこともない。そこに、3・11を経た東北の人びとの内面に残る傷の深さ が、惻そくそく々としのばれるのだ。 彼らはいま、ここにある日常を慈しむ。そこにしか人間の幸福はないという断固た る思いが、この作品を貫く。(OM)
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