قصة الكتاب :
朝日新聞出版(朝日文庫)/2002年/224ページ/本体480円/ISBN 978- 4-02-264301-8 目取真 俊(メドルマ シュン) 1960年沖縄県生まれ。1986年「平和通りと名付けられた街を歩いて」で 第12回新沖縄文学賞受賞。1997年「水滴」で第117回芥川賞受賞。2000 年「魂込め(まぶいぐみ)」で第26回川端康成文学賞、第4回木山捷平文 学賞受賞。小説の他に新聞や雑誌にエッセイ・評論などを発表。
「水滴」で1997年、芥川賞を受賞した作者初の短篇集。同賞の選考委員を務めた作 家の日野啓三は、この作品集を「豊かな南の島の自然、そこに残る神話伝承を小説の 材料として利用するだけでなく、それらの素材を、先の戦争の傷も含めて現在の沖縄 の現実といかに有機的に組み合わせて、一個の小説世界を創り出すか、を工夫し実験 している」と、非常に高く評価した。 表題の「魂ま ぶいぐみ込め」は、御う がん願 を捧げる祈祷師の女性ウタが主人公。夜、海岸で一人、 三さんしん線を奏でていた男が、唄いながら海亀に魂を奪われるように意識をなくす。その魂 を取り戻し、魂を込めようとウタが幾日祈り続けても、男は生き返らない。男の母親 は、戦争中、海亀の卵を食糧にしようとして掘り出している時に亡くなった。男は海 亀の子供のように、海へ戻って行ったのか……。 目取真の作品世界は、どれも現実と夢想、現代と神話の世界が地続きになっている。 なかでも登場人物の魂が読後、何日も離れぬほど痛ましくも神々しい境地を描いた収 録作「面うむかじ影ととう連ち りていれて」は忘れがたい。幼い頃から積み重なる悲惨な体験を抱える少女 は、いつしか死者の姿が見えるようになり、この世から魂をなくしてもなお、ガジマ ルの枝に腰掛けながら生者に語りかける。自分の物語を伝承したいという人間の思い は、これほどまでに強く、重いのだ。 沖縄の現実を文学にすることは一筋縄ではいかないが、目取真は今も南の島で身体 の感覚を研ぎ澄ませ、創作に専念している。(OM)
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