قصة الكتاب :
講談社(講談社文庫)/2010年/上:521ページ/本体762円/ISBN 978- 4-06-276769-9、下:518ページ/本体762円/ISBN 978-4-06-276770-5 大城 立裕(オオシロ タツヒロ) 1925年沖縄県生まれ。戦後、琉球政府に勤務、県立博物館長などを務める一方、創作を続け、 1967年「カクテル・パーティー」で沖縄初の芥川賞作家となる。沖縄の歴史と文化を主題とした 小説や戯曲、エッセイ多数。2002年には『大城立裕全集』全13巻が刊行された。
15世紀に成立した琉球王国は非武装の国であったが、17世紀の初頭、薩摩藩主の島 津氏に攻め落とされた。それをきっかけに、琉球は明清の冊封を受けながら、島津の 支配を強いられてきた。明治維新の後、東アジアの国際情勢は大きく変わり、それま での国際秩序が崩壊した。明治政府はまず琉球藩を設置し、やがて台湾征討を断行し た。薩摩の支配から逃れることに一いちる縷の望みをかけた琉球の当局者は、やがて厳しい 現実に直面することになる。 この小説は、琉球王国の日本併合という史実を踏まえ、虚実を織り交ぜながら、「琉 球処分」という近代史の一幕を再現した。大国の勢力争いに翻弄される当事者たちの 切なさは巧みな構成力と力強い筆致で描き出されている。 優れた作品は歳月が過ぎてもまったく色あせない。この小説はまさにそのような稀 に見る傑作である。それどころか、むしろ時間が経つにつれ、いっそう胸に迫ってく るものがある。この小説を読みながら、おそらく多くの読者は国際情勢の荒波の中で 漂流しつづける沖縄の現状を思い出し、住民たちのもどかしさに思いを馳せるであろ う。それだけ、この作品には「地方」というテーマでは語りつくせぬ思いが込められ ている。 「近代」という概念や、地政学の発想ではけっして捉えきれない、怒涛のような内 面の経験や、現地住民しか体験できない悲しみが、歴史の現場を生きた人びとの表情 を通して鮮やかに描き出されている。(CK)
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