|
قصة الكتاب :
講談社/2013年/163ページ/本体1400円/ISBN 978-4-06-218207-2 小野 正嗣(オノ マサツグ) 1970年大分県生まれ。パリ第8大学文学博士。明治学院大学文学部フラ ンス文学科准教授。2002年、「にぎやかな湾に背負われた船」で第15回 三島由紀夫賞受賞。著書に『森のはずれで』『マイクロバス』など。訳 書にマリー・ンディアイ『ロジー・カルプ』などがある。
表題は九州のある地方の岬を示す地名。小野はこれまでも、出身地・大分の海岸地 方と思しき場所を舞台として、そこでひっそりと、しかし地に足のついた暮らしを送 る人びとの姿を、ときに魔術的リアリズムともいうべき大胆なアイデアを交えつつ、 緻密な文体で描いてきた。本作品は、遠縁の叔母のもとで暮らすために海辺の村にやっ てきた小学校四年生の男児・尊たけるを主人公として、これまでの小野ワールドにさらに新 たな次元を加えた傑作である。母親が事実上、育児を放棄したせいで、主人公の少年 は知的障害をもつ兄と二人きり、食事にも事欠く日々を送った。トラウマを抱えてやっ てきた見知らぬ土地で、初めて会う温かい人びとに囲まれ、そして豊かな自然のふと ころに抱かれて、尊は次第に人生に対する肯定的な姿勢を身につけ始める。兄がいま どこで何をしているのかは読者には告げられない。しかしその不在を埋めるかのよう に、尊の前にはずっと昔に死んだはずの一人の少年の幻が現れ、その幻が励ましの声 をかけてくれるのだ。子供の視点を経由することで、小野の文章はいよいよ瑞々しい 精度を高めた。小さな者、弱き者たちに注がれるまなざしの優しさに、読者は心打た れずにはいないだろう。(NK)
|