قصة الكتاب :
東京創元社(創元推理文庫)/2010年/455ページ/本体800円/ISBN 978-4-488-47202-3 桜庭 一樹(サクラバ カズキ) 1971年島根県生まれ。ゲームなどのノベライズと並行してオリジナル小 説を発表。2003年開始の〈GOSICK〉シリーズで多くの読者を獲得。“初 期の代表作”とされる『赤朽葉家の伝説』で、2007年、第60回日本推理 作家協会賞を、2008年、『私の男』で第138回直木賞を受賞。小説、エッ セイ集等多数。
「赤朽葉万葉が空を飛ぶ男を見たのは、10才になったある夏のことだった。万葉は わたしの、祖母である」――そんな書き出しの一行とともに、母娘三代、1950年代か ら21世紀にまでおよぶサーガが幕を開ける。 語り手の祖母・万葉は「山の民」に置き去られた赤ん坊だった。村の若夫婦に引き 取られて育ち、長ずるに及び、製鉄業で財を成し村に君臨する旧家・赤朽葉家に望ま れて輿入れする。万葉は超能力者としての資質を折に触れ発揮し「千里眼奥様」と呼 ばれる。一方その娘・毛毬は、山陰地方きっての女暴走族集団のリーダーとして暴れ まわり、その名をとどろかせる。やがてきっぱり足を洗い、少女マンガの作者として 才能を開花させる。その娘である瞳子はまったく平凡な女の子で、何の目標も見つけ られないまま「ニート」として暮らしている。だが死の間際に祖母のいい残した、自 分は人を殺したことがあるという告白の謎を探るうち、驚くべき「殺人」の真実に行 きあたる。 これは当代きってのストーリーテラー桜庭一樹が、自らの故郷である島根県を舞台 に、製鉄業に支えられた村の栄えいこ枯盛せいすい衰を縦軸とし、マジック・リアリズム的想像力を 奔放に駆使して描いた骨太の長編小説である。幻想文学とミステリーの興味を合わせ もつ物語に引き込まれつつ、読者は女の視点から再創造された戦後日本史を堪能する ことだろう。(NK)
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