قصة الكتاب :
文藝春秋/2011年/400ページ/本体2000円/ISBN 978-4-16-374260-1 星野 博美(ホシノ ヒロミ) 1966年東京都生まれ。作家、写真家。2001年『転がる香港に苔は生えな い』で第32回大宅壮一ノンフィクション賞受賞。2012年『コンニャク屋 漂流記』で第63回読売文学賞随筆・紀行賞受賞。著書に『銭湯の女神』『愚 か者、中国をゆく』等、写真集に『華南体感』他。
著者は自分の「ルーツ」を探しもとめて、祖父の代からさらに三代さかのぼり、東 京、千葉、和歌山と先祖を訪ね歩いた。その記録を綴ったノンフィクションである。 特に決まった目的地などなく、漂流するように時空を動き回って、多くの親族に会っ て、興味深い話を聞き出すことにより、日本近代史を背景にしたスケールの大きな家 族年代記が書かれることになった。著者は東京の町工場の娘だが、漁師の末裔である。 というのも祖父はもともと外房(千葉県の太平洋側)で漁師をしていて、その後、東 京に出て町工場を始めたからだ。「コンニャク屋」という、およそ漁業とは関係のな い奇妙な名前は、なぜか漁師だった祖父の家の屋号(家の称号)だった。著者は大好 きだった祖父が残した手記を読み、その内容を手がかりにして調べを進め、「コンニャ ク屋」の祖先がはるばる紀伊地方(いまの和歌山県)から外房に移住してきたという ことを突き止めた。本書から鮮やかに浮かび上がるのは、個性的な漁師の家系の人び との活力と笑いに満ちた庶民的な陽気な生き方である。そして、丹念な調査と精力的 な取材によってそれを調べ上げ、記録した著者の筆致も発見の喜びに満ちて楽しげで、 多くの読者の共感を呼ぶことになった。(NM)
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