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قصة الكتاب :
新潮社/2009年/169ページ/本体1600円/ISBN 978-4-10-470902-1 稲葉 真弓(イナバ マユミ) 1950年愛知県生まれ。1992年『エンドレス・ワルツ』で女流文学賞、 1995年「声の娼婦」で平林たい子文学賞、「海松」で2008年第34回川端 康成文学賞、短編集『海松』で2010年第60回芸術選奨文部科学大臣賞文 学部門を受賞。他の著書に『私がそこに還るまで』『砂の肖像』など。
『海松』は4作品を収めた短篇集だが、特に優れているのは、2008年に川端康成文学 賞を受賞した表題作「海松」と、その続編「光の沼」。この2作は、志摩半島の一角の、 小さな湾近くの傾斜地に土地を買い、家を建てた独身中年女性を主人公とする。忙し い仕事の合間に、一人暮らしをする東京のマンションから時折、愛猫を連れてその別 荘に滞在する主人公の自然とのふれあいと、都会の喧騒を離れての静かな生活が、精 確で繊細な文体によって描写されていく。 ここでは大きな事件も起こらないし、波瀾に満ちたプロットの展開もなく、描かれ ている世界は非常に狭い。しかし、日々の小さな発見と観察を描き出す文体そのもの が表すしなやかな思考の流れ自体が豊かな物語を織りなしており、日本の女性文学が 伝統として守ってきた感性と短篇小説の技を受け継ぐものとなっている。「年に数度 ここで過ごすようになってから、なじんでいくものは火や沼の水、土くれだの菌類だ の家の壁をこする木の枝のざわめきといったものばかり。形があるようでないような」 (「海松」)。そして主人公は、別荘の真下に発見した沼から湧きだすホタルたちの発す る光を見ながら、「私ハ死ヌガ、我々ハ生キル」という境地に達する。そのような生 の真実の啓示の瞬間があちこちにちりばめられた短篇集である。(NM)
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