قصة الكتاب :
新潮社/2011年/132ページ/本体1200円/ISBN 978-4-10-306073-4 古川 日出男(フルカワ ヒデオ) 1966年福島県生まれ。2006年『LOVE』で三島由紀夫賞を受賞。2008年 にはメガノベル『聖家族』を刊行する。2007年に朗読CD『詩聖/詩声 日本近現代名詩選』を、2010年に朗読DVD『聖家族 voice edition』を発表。 他の作品に『ベルカ、吠えないのか?』『ドッグマザー』など。
古川日出男の中篇小説「馬たちよ、それでも光は無垢で」は、2011年3月の東日本 大震災とそのために福島で引き起こされた原発事故に対する、日本の小説家の初めて の本格的な応答のひとつとして注目される。著者は福島原発から遠くない、同じ福島 県の郡山市の出身であっただけに、自分の故郷がどうなったか心配になり、2011年4 月上旬に、「自殺衝動」に駆られるかのように、編集者たちとともに福島県の原発周 辺の地域を訪れた。この作品は、その見聞を記録した一種の紀行文なのだが、書き方 は単線的ではなく複雑である。大災害の後の「神隠しの時間」に巻き込まれたかのよ うに、時間は歪んだり行ったり来たりし、やがて古川が以前、東北6県を舞台に繰り 広げた超大作『聖家族』のフィクション中の主人公が現れて視察する一行の車に加わっ て新たな「物語」を紡ごうとする一方で、作家は連休には日本を離れてニューヨーク で華やかな文学イベントに参加し、そこでグラウンドゼロを眺めながら、9/11事件を 大震災に重ね合わせる。そして、原発事故後の現代の福島の光景と、長年の伝統を持 つ相馬野馬追の美しいイメージが重ね合わされる。混乱した状況のリアルなレポート を書くには、おそらくこういうスタイルしかなかったのだろう。(NM)
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