قصة الكتاب :
新潮社(新潮文庫)/1985年/上:501ページ/本体710円/ISBN 978-4- 10-116816-6、中:502ページ/本体710円/ISBN 978-4-10-116817-3、下: 520ページ/本体710円/ISBN 978-4-10-116818-0 井上 ひさし(イノウエ ヒサシ) 1934年山形県生まれ。小説家、劇作家、放送作家として幅広く活躍。代 表作に『藪原検校』(1973年、戯曲)、『吉里吉里人』(1981年、小説)、『父 と暮せば』(1994年、戯曲)等。1981年『吉里吉里人』で第33回読売文 学賞 小説賞、第2回日本SF大賞受賞。1984年に劇団「こまつ座」を結成。 文化功労者、日本藝術院会員。2010年没。
とある6月、小説家・古橋健二は取材のため青森行きの夜行急行列車に乗っていた。 ところが列車は早朝、岩手県一ノ関近くで緊急停車する。車内には猟銃で武装した男 たちが乗り込んできて、乗客にパスポートを見せるよう要求する。この朝、東北の寒 村・吉里吉里村は突如、日本からの分離独立を一方的に宣言、日本人ではなく吉里吉 里人の国家となったのである。日本政府の農業軽視政策に対するふんまんを押さえ切 れなくなった農民たちは、藤原清衡が隠いんとく匿したという伝説の黄金を軍資金として、金 本位制にもとづく独立国を立ち上げたのだった。 古橋は新しい国を訪れた最初の作家として、独立騒ぎのてんやわんやの中に巻き込 まれていく。彼は第一回吉里吉里文学大賞を授けられたあげく、ついには大統領の地 位にまで上り詰める。だが日本国は吉里吉里国を断固として認めず、反乱・騒そうじょう擾罪ざいを 適用し、自衛隊を派遣して鎮圧にかかる。吉里吉里人たちは次々に奇抜な策をくりだ して抵抗するが、はたして独立を貫くことができるのか? 戦後日本に対するラディカルな批判を含みつつ、全編ユーモアと奇想の横おういつ溢するこ の大長編は、国家の近代化の流れの中で常に損な役回りを押しつけられてきた「東北」 の喜ばしい復権の書であると同時に、日本語の活力を存分に駆使したユートピア小説 として、比類のない達成度を示している。(NK)
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