قصة الكتاب :
講談社(講談社学術文庫)/2009年/301ページ/本体1050円/ISBN 978- 4-06-291932-6
赤坂 憲雄(アカサカ ノリオ) 1953年東京都生まれ。民俗学者。学習院大学教授、福島県立博物館館長。 東北文化研究センター設立後、1999年『東北学』を創刊。『岡本太郎の 見た日本』で2008年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。他に東北に関する著 書多数。
日本の民俗学といって、まず思い出されるのは柳田国男であろう。歴史研究の分野 で見落とされた部分をすくい上げ、それまでないがしろにされてきた「常民」の生活 文化を掘り起こした点では柳田国男の研究は先駆的であり、また、フィールドワーク にもとづく民俗学の確立に大きな功績を残した。しかし、あらゆる学問研究と同じよ うに、柳田国男の民俗学も決して完全無欠ではない。 単一民族としての日本像を作り上げるために、柳田国男は稲作と祖霊信仰およびそ の主体としての常民を文化アイデンティティの中心に据えた。著者は柳田国男の仕事 を土台にしながらも、民俗学の誕生と国民国家の創出という時代的要請との相関性を 鋭く見抜いた。 柳田国男の篩ふるいから何がふるい落とされたのか。それを検証するために、著者は東北 の地に観測点を設け、山奥の村を訪ね歩き、地道な聞き書きを続けてきた。そこで見 えてきたのは、稲作以前の東北の姿であり、仏教を受容する前の信仰であった。東北 にはこれまで知られていない文化の多様性があり、柳田国男がいうところの、稲を作 る常民たちの東北はただの幻像に過ぎない。 東北にまつわる神話を解体し、これまで語られていない僻地や山奥の生活文化に光 を当てる本書は、真の日本理解にとって欠かせない一冊である。翻訳に際して、本書 はどのような文脈において書かれたかについて、わかりやすい案内や解説が望ましい。 (CK)
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