قصة الكتاب :
勁草書房/2009年/186ページ/本体2400円/ISBN 978-4-326-50316-2 橘木 俊詔(タチバナキ トシアキ) 1943年生まれ。専門は労働経済学。著書に『格差社会』、『女女格差』、『日本の教育格差』他。 松浦 司(マツウラ ツカサ) 1977年生まれ。中央大学経済学部准教授。専門は応用経済学。
本書は教育制度そのものではなく、学校選びや専門の選好などについて、従来と異 なった視点から考察を行ったものである。知識偏重、受験競争、学歴重視など、日本 の教育問題を経済効果の角度から読み解くという発想は興味を引く。 教育は国家にとって社会を形作り、文化を継承させるための手段だが、個人にとっ ては、しばしば明確な目的を持つ経済行為でもある。近年、学生の理科離れが話題に なり、その原因について、学校制度や指導方法と関連付けて語られていた。本書は、 統計資料にもとづいて分析を行い、文系出身者に比べて、理工系出身者は収入の面に おいても、出世の面においても明らかに不利である実態を明らかにした。また、学歴 と親の収入との関係、医学部人気の秘密、私立小中学校が選好された理由、早慶は名 門校になった経緯などを通して、現代日本社会の一側面が鮮やかにクローズアップさ れている。 日本文化を理解するには教育のあり方を知らなければならない。しかし、教育制度 や学校運営など公教育の情報だけでは必ずしも十分ではない。むしろ塾の役割、生徒 および保護者の意識など、公教育の力が及ばないところは日本人の意識や行動、日本 社会のあり方に大きな影響を与えている。その意味では本書は日本理解にとって欠か せない一冊といえる。(CK)
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