قصة الكتاب :
新潮社(新潮文庫)/2011年/上:432ページ/本体590円/ISBN 978-4- 10-134719-6、下:400ページ/本体552円/ISBN 978-4-10-134720-2 初出:1993年早川書房より単行本刊行 高村 薫(タカムラ カオル) 1953年生まれ。1993年『リヴィエラを撃て』で日本推理作家協会賞、日 本冒険小説協会大賞を受賞。同年『マークスの山』で直木賞を受賞。 1998年『レディ・ジョーカー』で毎日出版文化賞を受賞。2006年『新リ ア王』で親鸞賞を受賞。2010年『太陽を曳く馬』で読売文学賞を受賞。
「暗い山」のイメージに取りつかれ、精神を脅かされつつ、不条理な凶行をくりか えす若い殺人犯。その殺人犯の影を追い、不屈の闘志で捜査にあたる警視庁の刑事、 合田。 1976年、日本第二の高峰である南アルプス北岳で起こった一家心中事件がすべての 発端である。その悲劇でただひとり生き残った少年・水沢は、過去の記憶をほとんど 失い、虚無的な暮らしに身を委ねている。理解ある養父母やひたむきに彼を支えよう とする恋人の存在も、彼の魂を救うことはできない。たまたま、過去のある重大犯罪 の秘密を知ってしまった水沢は、罰せられることもないまま、いまは社会の有力者と して君臨している者たちから金を脅し取ろうとする。ところがその計画は上じょうしゅび首尾に運 ぶどころか、水沢をはじめ多くの人間たちの運命を悲惨な方向にねじまげてしまうの だ。 戦せんりつ慄に満ちた物語が、畳み掛けるようなテンポで展開されていく。犯人と刑事の間 の緊迫したやりとり、警察組織の抱えるさまざまな軋あつれき轢、そして捜査に圧力をかけて くる有力者たちの高慢と堕落。それらを緻密に、かつダイナミックに描き出す作者の 素晴らしい筆力によって、これはミステリーというジャンルをはるかに超えた、現代 社会の深しんえん淵を直視する傑作小説となっている。(NK)
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