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قصة الكتاب :
集英社(集英社文庫)/2012年/200ページ/本体400円/ISBN 978-4-08- 746798-7 初出:「すばる」2008年11月号 中村 文則(ナカムラ フミノリ) 1977年生まれ。2002年、『銃』で第34回新潮新人賞を受賞。2004年、『遮 光』で第26回野間文芸新人賞を受賞。2005年に『土の中の子供』で芥川 賞受賞。2010年『掏摸<スリ>』で第4回大江健三郎賞を受賞。著書に『世 界の果て』、『王国』、『迷宮』他。
中村文則はデビュー以来、現代日本の若手作家には珍しく、一貫して、犯罪、殺人、 自殺、児童虐待とネグレクト、といった現代社会をむしばむ暗い主題を追求してきた。 彼の新しい長編『何もかも憂鬱な夜に』のテーマもまた、極めて重い。主人公は地方 の拘置所に勤務する若い刑務官で、毎日、犯罪者たちと向きあっている。彼自身、孤 児として養護施設で育ち、自殺しようとした暗い過去を持つが、人徳ある「施設長」 の感化のおかげで生きる希望を見いだして、今日までやってくることができた。しか し、彼の友人は「何もかも憂鬱な夜に」という言葉を残して自殺してしまった。拘置 所で主人公が心配しているのは、控訴しようともせずにむざむざ死刑が確定すること を待っている、まだ未成年の殺人犯のことだ。彼はどうして控訴しようとしないのか、 彼は死刑になるべきなのか、そもそも死刑などというものがあっていいのか。こういっ た容易に解決できない問題に、主人公は直面して悩む。この作品が発表された翌年の 2009年、日本では裁判員制度が新たに導入され、裁判や量刑のあり方に関する意識が 高まり、死刑制度の是非そのものについても議論が盛んになった。そういった社会の 動静を背景に、この小説は単に文学的という以上の重みを持っている。(NM)
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