قصة الكتاب :
講談社(講談社文芸文庫)/1997年/400ページ/本体1200円/ISBN 978- 4-06-197584-2 初出:(『由煕』)「群像」1988年11月号(『ナビ・タリョン』)「群像」1982年 11月号 李 良枝(イ ヤンジ) 1955年生まれ。1988年ソウル大学を卒業。1989年『由煕』で、第100回芥川賞を受賞。著作に『ナ ビ・タリョン』、『かずきめ』等。1992年逝去。1993年、講談社より『李良枝全集』が刊行された。
李良枝(イ ヤンジ)は、在日朝鮮人二世の日本語作家。本書は彼女の芥川賞受賞 作「由熙(ユヒ)」のほか、計4編の短編を集めた作品集である。李良枝は残念ながら 1992年に37歳の若さで病没したが、本書に収められた作品は、彼女が在日韓国人によ る日本語文学の流れの中で「確実に新しい」(中上健次による評価)ものを生み出し、 現代の日本文学にとってもアクチュアルな問題を提起する重要な作家であることを示 すものである。「由熙」の主人公は、日本育ちの在日韓国人女性。自分が韓国人であ ることを隠して生きてきた。その彼女が韓国に留学し、ソウルで下宿生活を送るのだ が、結局、最後まで韓国人の気質にも韓国語にもなじめず、挫折して日本に帰ってし まう。「ナビ・タリョン」(嘆きの蝶)も同様に在日韓国人女性の視点から、両親の不 和、二人の兄の相次ぐ死、年上の日本人男性との不倫の愛、韓国への留学などの出来 事を描き出す。李良枝のこれらの小説は、いずれも両親の祖国である韓国と自分が育っ た国である日本の間で揺れながら、アイデンティティを探し求める若い女性の姿を描 いた自伝的作品である。二つの文化、二つの言語の間にまたがって創作することを通 じて、李良枝は現代日本語文学の新局面を切り拓き、中上健次からリービ英雄にいた るまで、多くの同時代の作家たちの強い共感を勝ち得ることになった。(NM)
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